5.《ネタバレ》 この映画を劇場で観たのは中学生時代。いずれ連合国軍側の反撃が始まるだろうと期待していたら勝ったのか負けたのか分からないような状態で終わり、とても微妙な見応えを覚えました。オールスターキャストと謳われていましたが、当時の私はショーン・コネリー以外は知りませんでした。
そんな中学生の理解力を差し引いても、親切な映画とは言い難いです。ドイツ占領下のオランダの橋梁を空挺部隊で電撃的に占拠し、地上部隊が街道に沿って順に制圧して行く作戦。空挺部隊の降下地点がばらけているのに、地理的な位置関係の補足なしに戦闘がどんどん進みます。おかげで誰がどこで戦っているのかが分からない。ラストで「遠すぎた」と形容されるアーネムには、アンソニー・ホプキンスとショーン・コネリーが降下するけど、別々の場所で戦闘をしていて、その位置関係さえ分かりません。基礎知識がある欧米人が観る分にはこれで良かったのかも知れませんけど、もう少し分かり易く作って欲しかったです。
とは言え、今回が4回目くらいの鑑賞で、観る度に見どころが増しています。作戦の概容が頭に入った前提で観ると、細かい描写の意味が味わえるからです。例えば、作戦開始前に街道に沿って間延びした戦車や装甲車の縦列をしっかり見せる辺りは「大作」らしい念の入れ様で、かなり正確に作られた映画なのだと思います。
本作のテーマは「酷い作戦」の弊害で、発案者であるモントゴメリー元帥を批判していることは明らかです。空挺隊の降下地点で自宅を接収され、前線基地や野戦病院として使用されるオランダ市民の描写に力を入れています。強引な作戦の被害者です。被害者とは言えないけど、多くの兵士が命を落とします。連合国側は勿論ですが、それに付き合わされる独軍側でも死なずに済んだ人が多いことが意識されました。前線から離れた場所で作戦を立案する人の「命の軽視」は、どこの国でも大差なかったのだと思います。
二次大戦を扱った邦画は現場の悲惨を描いて「反戦」を訴える作品が多いけど、こちらは「作戦の不備・不手際・無謀」を訴えていて、戦争自体を否定していません。そこは戦争に勝った側と負けた側の温度差だと思います。