9.「赤い恐怖」という邦題が付いていますが、本作を見てまず思い出すのは「白い恐怖」。
巻き込まれサスペンスと並んでヒッチコックが好んだサイコ・サスペンスですが、
ティッピ・ヘドレンの美しさ、ラトランド邸、街並・・・と重なるバーナード・ハーマンの音楽、
これら作品を構成する要素の落ち着いた味わいに品や格調の高さを感じます。
マーニーがラトランドの会社で盗みを働く。掃除のおばさんとマーニーの行動を同時に見せる。
落ちそうな靴、音。ヒッチコックのこだわりを感じる緊張感があります。
しかしその後、中盤以降はショーン・コネリー演じる夫が完璧すぎる。
あまりにも全てお見通しで常にマーニーの先回りをするのですが、
それ故サスペンスとしては盛り上がりに欠けてしまう。
「鳥」のヒロインに抜擢し、ヒッチコックが見出し寵愛したティッピ・ヘドレン。
この頃には2人の関係は微妙なものであったようですが、
彼女が演じるマーニーをねちっこく執拗に追い詰めていく様が怖かったりもします。