10.極彩色(いや、もうこれは極楽色とでも言うべきか)に溢れる映像美、“可愛らしさ”と“気色悪さ”が絶妙のバランスで同居するそのビジュアルワールドは、「夢」を表現するにはふさわしく、映像美だけでグイグイと引き込む。
益々進化し続けるジャパニメーションのクオリティには、もはや感嘆するしかないだろう。
が、相変わらずというか、なんというか、やはりストーリーそのものに物足りなさを感じる。
複雑に難解に物語を入り込ませ、そのくせ核心となるテーマ性は中途半端で、チープさすら感じてしまう。
目まぐるしいまでに疾走するビジュアルに、ストーリーが追いついていないような。そういう印象を近年のアニメ映画に、よく感じてしまう。
今作の場合、「夢」という普遍的でありながら複雑怪奇な素材を展開しているわけだから、ストーリーの展開自体はもっとシンプルでも良かったかもしれない。
それにしても、この「夢の世界」を原作者・筒井康隆はどう文体化しているのだろう。とても気になるところだ。
まあそれはそれとして、繰り返しになるが、ビジュアルのクオリティの高さは物凄い。めくるめく“混沌”の世界にただ包み込まれることは、それはそれで一興だろう。