1.《ネタバレ》 香港黒社会の内部抗争ものだが、組織誕生四百年の歴史を誇るかのように西洋伝来のピストルを使わない。ひたすら腕力、木で・石で・スコップで直接殴る、首を絞める。古代中国刑罰史にでも出てきそうな、箱詰め崖落としもある。もう伝統の格式である。思えば冒頭、チリレンゲをジャリジャリと食べたあの感覚が、この映画の基本姿勢だったわけだ。で、その伝統に則った契約が、いとも簡単に破られるのがポイントで、それが粗暴な方ではなく理知的な方によって破られるところに、しょせん契約なんて権力を獲ったものの勝手、いうこの世界の酷薄さが見えてくる。ああいうことやろうとしてるときに子ども連れてくるかなあ、とも思ったが、そうやって安心させる冷酷さの表現なんだろう。しずしずと夜の街を徐行していく車列シーンの緊張がたまらない。