1.《ネタバレ》 シニア料金にとうてい見えない風吹ジュンをあえて使った、って意図は分かる。寂しい笑顔をやらせると右に出るものがない人で(次点が樋口可南子かな)、林隆三の目に映る「自信なげな慎ましい奥さん」像にピタリなわけ。で、そういう彼女の内側から徐々に胎動してくるものを描けたら、そりゃ成功だったんだけど、どうもそうは思えなかった。内側からというより、付け焼き刃で張り切ってしまってるって印象なの。中央線での窓外への凝視なども、私には段取りが弱いように感じられた。空回りした果てにどうかなっちゃう第二幕が来るのかな、と思ってしまう。風吹ジュンはテレビドラマ黄金期に、倉本聡・向田邦子・山田太一の三大ライターに重宝され、しばしばドロドロから一歩引いたところで生きる女性を好演してきた、その記憶が強すぎるのかもしれない。役者が芸域を広げようとするのは大事なことだが、どうしてもその人のニンという限界はあるもので、加藤治子・三田佳子が出番は少なくても強烈な印象を残すのに対し、これは風吹ジュンの役どころではなかったのではないか。そう思うこと自体が、ホラ林隆三の目になってる、って言われると返せないんだけど。この世代の女性を主人公にした映画が作られたことには大賛成。