2.《ネタバレ》 せっせと作られていく廃墟の街のその荒廃ぶりが、フィルムに記録されていく。外からの暴力にあって廃墟となったわけではない。強制立ち退きという、いわば内なる病魔によって、秩序正しく蝕まれていったその荒廃は、より痛ましい。消毒液を撒く人たちの姿も凶々しく、破壊するための労働に従事している男たちの肉体のみ、テカテカと光っている。近代化とはどこの国でも結局こういうことになっちゃうんだなあ、という深い諦めのようなもの。街をなくしてダムにたたえられることになるだろう膨大な量の水に圧倒されながら、その街をさすらう女の飲むペットボトルの水がより貴重に見えてくる。いくつかはさまれる驚きのカット、京劇役者が部屋に座っているのは、消えていく伝統ってことかな、と考えられないこともなかったが、飛んでっちゃった建物は、私にはまったく理解不能だった。それが何を意味するのかも、そのカットが入ることでこの映画にどういう効果をもたらそうとしたのかも。