2.作家とタイプライターと虚実入り混じった展開にクローネンバーグ『裸のランチ』を想起してしまって(『ハメット』が10年先ですが)どこか気味の悪い怪しさを感じながら見てしまったが、この独特の怪しさが『裸のランチ』から来るのか『ハメット』の世界観なのかが今さら判別できないのがもどかしい。でもセットを使って撮影してることもあってあきらかに他のヴェンダース作品には無い虚構性を発揮している。撮影が一度頓挫してその合間にまるで「『ハメット』撮影における受難」とでも言える『ことの次第』を撮ったらしいのだが、これを見るとなるほどアメリカとヨーロッパの、娯楽と芸術の、コッポラとヴェンダースの対立と妥協がこの奇妙な世界観を作ったのかもしれないとも思う。けして嫌いではない。途中、物語が破綻へ向かっているようにも思ったが終わってみれば全くそんなことはなく、そこがかえって物足りなかったりする。