2.現存する成瀬巳喜男映画の中でも、最古の部類に入る作品。
“産みの親”対“育ての親”の構図。
劇中の岡譲二のセリフが印象的。
「子供を産むのが母親ではなくて、子供を育てるのが、母親の母親たる所以だ」。
まあ確かに理屈ではそうなんだけど、お腹を痛めて産んだ我が子を、手元に置きたいという、産みの親の心情というものがあるのでは?
ここは少し、一方的な善人の主張という感じだが、まあ、分かりやすくて良い。
成瀬巳喜男作品にしては、軽いノリで分かりやすく、心情的にも感情移入しやすい作品である。
それにしても、1930年代の成瀬巳喜男映画は、本当に鑑賞にこぎつけるだけで大変である。
正直なところ、映画の内容より、貴重な成瀬巳喜男映画を観られたということに、より満足感を得た感じである(苦笑)。