6.《ネタバレ》 同監督作「アドレナリン」のラストでもゲーム風の演出がありましたが、本作でもラストに「全てはゲームの中の出来事だった?」と思わせる演出がありましたね。
現実と非現実の対比、今いる世界もまた誰かに支配されているゲームの世界なのではないかと、作り手の真意について色々と考えさせられる深い映画……なんて事は全然無くて、お気楽SFアクションとして楽しむのが得策な一本なのだと思います。
序盤において主題となるゲーム「スレイヤーズ」の勝利条件が不明な事とか、不満点は色々あったりするのですが「そんなの気にせず楽しんだもん勝ちだよ」と思わせる作品としての大らかさがあるんですよね。
ラストのゲームオーバー画面にしたって「全てはゲームの中の出来事。だから劇中で科学考証とかが間違っていてもツッコまないでよ」という免罪符であり「その代わり、色々アクションとかエロスとか詰め込んで、ゲームらしい楽しい映画だったでしょう?」というメッセージでもあったように思います。
それでも、せっかく主人公とプレイヤーの少年が意思疎通出来るようになったのに、その後に二人が全く絡まず、何の絆も生まれず、ラスボスを倒すのに少し手助けしただけで終わったというのは、何とも寂しかったですね。
あくまでも「ゲームの中で操られている主人公が、自分を取り戻し、家族も取り戻す物語」で終わらせたかった為、意図的にプレイヤー側の出番を減らしたのだと思われますが、そこはもうちょっと欲張って、両者の交流を描いても良かったんじゃないでしょうか。
俳優陣は豪華な顔触れの為(こんな人達をゲームのキャラクターとして操作出来たら、そりゃあ楽しいだろうな……)なんていう、不謹慎な欲望を刺激するものがあり、作中で「ソサエティ」が流行っている事への説得力にも繋がっていて、良かったと思います。
主人公の奥さんが扇情的な恰好をさせられて、四つん這いになった時のお尻がエロかったとか、でもそんな奥さんを操作している男は極度の肥満で、しかも裸でプレイしている姿が最高に気持ち悪かったとか、この設定ならではの印象的な場面が幾つかあるのも好印象。
「窮地の主人公を前にして、黒幕が自らの目論見について得意気にベラベラ喋り、それが中継されているせいで墓穴を掘ってしまう」なんていうテンプレ展開を、堂々とやってみせる辺りも、短所ではなく長所であるように感じられましたね。
全力で肯定するのは難しいけど、楽しめたか否かという基準で判断すれば、しっかり楽しむ事が出来た一品でした。