1.《ネタバレ》 見渡す限りの大海原で、船が転覆。
いずれ船は完全に沈んでしまう為、助かりたければサメがいる海を泳ぎ、陸を目指すしかない……
その、陸地までの距離が16から20キロという設定なのが絶妙でしたね。
これが10キロなら迷わず決断出来たと思うし、100キロなら多分諦めて船に残って救援されるのを待っただろうなと思える、程好い塩梅。
実際には20キロ以上の距離があったらしく「やっぱり船に残っていれば良かった」とグループ内で言い争いに発展する辺りも、非常にドロドロしていて良かったです。
そんな中で、陸地を見つけた時の安堵感といったらもう、観ているこちらまでホッと息を吐いちゃうぐらい。
実話ネタという事もあってか、主人公達の装備が貧弱であり、食糧も武器も殆ど持ち合わせてないから、心細さが半端無いんですよね。
だからこそ「サメと戦う」という選択肢は有り得ず、ひたすらゴールの陸地を目指すしかない。
それはともすれば「退屈さ」にも繋がっちゃいますし、実際自分も中盤で(なんか飽きてきた……)という考えが頭をよぎったりもしたんですが、終わってみれば、その手法は正解だったように思えます。
とにかく、余計な可能性を与えたりしない。
唯一にして絶対のゴール目指して、ひたすら泳ぐしかない。
勝利条件、助かる方法は「陸地に辿り着く」事しか無いんだという、この単純明快さこそが、本作の特長であったかと。
最後の最後でヒロインは無事に陸地に辿り着き、生き延びるも、未だ海中にいたルークは引き上げられる直前で殺されるという辺りも、その「陸地に辿り着けば大丈夫」という価値観に則してるんですよね。
だから「主人公格のルークが殺される」という終わり方にも拘らず、理不尽さを感じさせない。
この辺りは、本当に上手かったです。
「地味」「堅実」「単調で退屈」「シンプルで力強い」と、貶す事も褒める事も簡単に出来そうな本作品。
自分としては「生存ハッピーエンド」ならぬ「一人だけ生き残ってしまったバッドエンド」とも言うべき、重苦しい終わり方まで含め、なんだかんだで楽しめた一品でした。