1.《ネタバレ》 まぁ実際、「ルルドの泉」自体が奇跡なのかどうか疑わしいものではありますからね。聖母マリアの出現話も釈然としないし、発見者ベルナデッタの遺体もまるで腐敗しないともてはやされ奇跡に祭り上げられたし。そしてなにより、ルルドには多くの巡礼者が訪れるけど、公式に奇跡と認定されたのは数えるほどしかいない。ここに一つの大きなジレンマがある。もし神が存在し、ルルドが聖地であるのなら、なぜほとんどの人の病状が回復しないのか。回復した人としない人の違いは何か。信仰心の厚さの問題か。この作品では、熱心な信者が一向に回復せず、観光気分でやってきた主人公に奇跡が起こる。全体的に淡々としていて地味な描き方の映画だけど、この展開というのは実は相当に皮肉だなと思うんです。劇中、何人かが神父さんに率直な疑問をぶつけてるけれど、なんだかわかったようなわからないような、煮え切らない答えしか返ってこない。主人公も歩けるようになって、俄然生きる気力が湧いてきたみたいだけど、そのせいで周りからは嫉妬の眼差しで見られるようになる。あの終盤は、結局彼女の回復が一時的なもので、また車いす生活に戻ることを示唆しているけれど、おそらくはその時に初めて彼女は周囲のそういう羨望やねたみに気づき、自分と周りの人たちのことを見つめ直したのではないか。奇跡なんて嘘っぱちだというメッセージにもとれる作品だけど、彼女を改心させるための奇跡なのだとしたら、この奇跡には意味があったのかもしれない。