3.《ネタバレ》 同じく韓国映画であり、やはり実在の未解決事件を題材にした「殺人の追憶」が骨太のサスペンス映画だったのに対して、本作はより娯楽性の高い社会派ドラマを意識した作りになっています。 少年5人が神隠しにあったように消え去り、数年後に白骨死体で発見された。この事件が持つ異常性や「未解決事件」という大きな注目度は、メディアや評論家すじにとっては "金のなる木" です。この映画はその、金のなる木に群がるTV屋の男と大学教授の暴走ぶりによって、多くの問いかけを視聴者に投げかけます。彼らが求めるのは本当に真実の究明なのか、それとも名声なのか? そして、目的のために人は真実をどこまで歪曲していいのか? 興味深いのは、この事件を利用して金儲けをしようとする意味では、この映画も彼らと同類ということ。しかし、犯人がハッキリと顔を出して登場し、主人公とカーチェイスをしたり、殴り合いをしたり、このへんは安っぽい感じがしてキライでしたが、思えばこれは「娯楽映画」(=事件をモチーフにしたフィクション) であることの堂々たる宣言のようにも思えます。ここで改めて、この映画は前述のメディアや評論家たちとは一線を画すことが理解できます。真実を伝えることだけが目的じゃない。初めから、その目的自体が違う。 最終的に遺族の側に寄り添い、死んだ者たちは天国で仲良く幸せに、といった決着は、「映画」だからこそできる、被害者や亡くなった遺族たちへの精一杯の供養ではないのか。