1.《ネタバレ》 リリとハーゲンが小高い丘の上から見下ろす風景の美しさに息を吞むとともに、あぁこの瞬間が少女と犬にとって幸福の絶頂なんだなあ、と予感めいたものが確かにありました。 そのハーゲンが捨てられた直後、いったん彼目線の展開になるので、このまま「銀牙-流れ星」のような犬目線の冒険活劇になるのかな (笑) と思いきやそうでもなく、なかなか壮絶な人生、、ならぬ犬生ではありました。 どうしても犬の殺処分ばかりを問題提起しがちですが、そもそも血統書付きと雑種を区分けしたり、リリを「ホワイト・ゴッド」と称するあたり、人間が気づかぬうちに血によって「命」の重さそのものを値踏みしている事実、その警告が含みとしてありそうです。思えば、冒頭の白衣に飛び散った食用牛の血、拭っても消えないその濃さが、本作の根の深さを暗示しているようにも思えます。 市街地を疾走する野犬の群れはスペクタクルではあるし、トランペットの音色が実は重要な伏線であったり、映画としてツボは外していないと思います。 ただ、本作は怒りとか悲しみとか、そういった心が揺さぶられるような感情はなかったです。 知っていながら見て見ぬふりをするしかない、というやり切れなさ、そういう嫌な部分を見透かされたような、そんな心境になりました。