1.《ネタバレ》 完璧な映画では当然ないにしても、多少のことは主人公のキャラクターだけで全部許しちゃるという気分だった。自然体で邪気のない愛すべき人物で、東京に行ってからもぜひこの方言のままで通してもらいたい(周囲に真似されそうだ)。終盤で、この主人公が父親と祖父の間で手をつないだところでは少し感動した。最後の歌もかなりいい感じである。
全体としても、基本的には退屈せずに見て、それなりに盛り上がってからすっきり終わる普通に面白いアニメだった。しかし一方では必然性不明の設定とか細切れの事物が流れ去っていくような落ち着かない感じの話になっており、また宮崎ヒーロー並みの離れ業とかコリコの街の発明少年のようなのとか第3新東京市で使徒を迎撃するような状況には新しさを感じない。それでも全部通して見れば、細かい点でわからないことはあっても(考える気がない)何を表現したかったのかはおおむねわかる気がする。
個人的な疑問点としては、2020年までに自動運転車を実現するというのが変に現実味のある設定で、単に事実に取材しただけのようで夢が感じられないことである。人が要らない完全自動運転にしても、すでに現実の延長上に見えるものであって驚きも何もないわけだが、あるいはもしかすると“発達した技術は魔法と区別がつかない”というような主張を、抽象論ではなく今ある現実に即して見せようとするとこうなるのかと思ったりした。またそれよりも自分としては、“年配の科学者が不可能だと言った場合、それはほとんど間違っている”(クラークの三法則の1より)ということの方が思い出され、これから伸びようとする若い世代への期待を込めた物語だったのかという気もした。
そういうことで点数は、主人公のおかげもあって少しいい点にしておくが、これはDVDで見た場合の点数であって、もし映画館で見ていればさらに+1くらいにはしていたかも知れない。
ついでに、関係ないかも知れないが思いついたので書いておくと、劇中の整備工場(特に灯台の下にあった方)は、エドワード・ホッパーの「海辺の部屋」のイメージ(部分)かと思ったりした。