1.《ネタバレ》 ホロコースト否定論と聞いて、昔々のマルコポーロ事件を思い出した。マルコポーロのあの記事は大して予備知識の無かった私には結構面白かったし、雑誌自体も好きだったので事の結果には残念な思いだった。
一方、いま日本では、虐殺ではないが慰安婦問題などが隣の国から糾弾されていて、強制性が有るの無いのと悩ましい事態になっている。記事を書いた人間は現地取材などしていない唯のウソ記事にもかかわらず、相手側からは体験談などが語られている。そういった感情で事実を押し切るような事が有ってはいけないよなあ、と思ってみていたら、本作の弁護方針では被害者を出廷させない方針だという。
証拠と論理だけでホロコーストの証明をするのだと思っていたら、それもちょっと違っていて、いわゆる被告人の悪性格の立証など、それはどうよ?と思う部分もあり、意外。そもそもコレ、名誉棄損裁判なんだから、問題の焦点はホロコーストの事実性ではない気もするのだが。
法廷モノなどで期待されるのは、終始旗色の悪い裁判における「最後の大逆転」という感じだが、本作は基本的には実話ベースらしく、そういう大逆転劇は難しかったのかもしれない。一応裁判終盤で、裁判長(?)が「ヤツは本気で信じているのではないのか?」という揺さぶりがあるけど、それまでの裁判の展開を見ていて、もう勝利を確信してしまっているので、その辺のカタルシスは弱い。
ところでこの物語で一番驚くのは、訴えられた側に事実の立証責任があるというイギリスの制度だ。英国で訴えられたら、とんだ災難と言うしかない。