2.《ネタバレ》 まず主演女優は好きだ。そうでなければ絶対見なかった。それ以外の誘因は全くない。2017年モスクワ国際映画祭で受賞したそうだがそういうことにも関心がない。朝倉あきさん好きだーーーとひたすら思いながら見ていた。
撮影場所は主に東京都国立市らしいが、町田市(制作会社の所在地)の方でも協力していたようなので注目されないと気の毒だ。また終盤で出かけた元彼氏の実家は富山県下新川郡朝日町と特定されていたが、主人公が降りた富山地方鉄道本線の内山駅は隣の黒部市にある。各方面の協力により製作されたようだが、それほどご当地映画っぽいところは見えなかった。
監督はもともと詩人だそうで、映画というのは小説というより詩に似ているという話(ネット上のインタビュー記事)はなるほどと思った。自分としては散文を読むようにしか映画を見られないわけだが、この物語に関してはだいたいのところはわからなくもなかった。ただ自分の話でないのでそのまま同調できないところはある。
少し引っかかったのは元彼氏の母親が“人生とは何かを獲得していくことではなく…”と語ったところである。この言葉は、すでに失った領域が広がってしまった人間にはぐさっと刺さるものがあるわけだが、母親が自分のこととして言うのはいいとして、まだ若い主人公に対して“獲得することではない”と言い切るのは言い過ぎだ。さまざまな方面や局面で獲得したり失陥したりしながらたえず自分を更新していく過程が人生だ、といった感じになるはずで、少なくともこの主人公に関しては、これから新しい局面で獲得していくものがあるはずである。
そのほか全体的には、控え目に見える主人公のおかけで優しく穏やかに物語が流れていく印象だった。踊るように歩いていて持ち物が少しひっかかって逸らした様子が楽しげに見える。監督によると男にとっては面倒くさい女性ということらしいが、金を払いたがるとかキャンセルを気にするとかは潔癖という意味では嫌いでない。それよりかなり前方に心理的バリケードを張っている場合があるとか、何かあると引っ込んでしまって接点が失われるタイプは困ってしまう。「一人で帰ってもいいですか」のところはやっちゃった感が出ていたが、ラストの一瞬の笑顔には和まされた。