1.《ネタバレ》 1922年、あの時代、男の誇りと言えば自らの土地と息子だった――。アメリカ南部の田舎町で農家を営むジェイムズ一家。家長であるウィルフレッドはいま、とある問題に頭を悩ませていた。この肥沃な農地を父から相続した妻が、この地を売り払って都会暮らしを望んでいるのだ。権利は全て相続人の妻にあり、拒否すれば離婚も辞さないという。だが、ウィルフレッドの望みは一人息子であるヘンリーにこの土地を引き継がせ、これからもここで農家として暮らしてゆくことだった。次第にギクシャクし、諍いが絶えなくなるジェイムズ一家。悩んだ末に、ウィルフレッドはある一つの決断を下す。それは、自らの妻を殺してしまうことだった――。綿密に計画を練り、息子の手を借りて完全犯罪を実行に移すウィルフレッド。裏庭の井戸に妻の死体を隠し、それまでと変わらぬ生活を営もうとする父と息子だったが、その日から少しずつ日常が歪み始める…。ネブラスカの広大な田舎町を舞台に、妻を殺した父と息子が辿る悲劇をダークに描いたサスペンス・スリラー。原作は泣く子も黙るモダン・ホラーの大家、スティーヴン・キング。いかにも彼らしい、全編に渡っておどろおどろしい空気が濃密に漂う、こってり濃厚な作品でしたね、これ。もう見ているだけで汗が滲んできそうな暑苦しい田舎町を舞台に描かれる、ある一家族の愛憎渦巻く犯罪劇は見応え充分でした。特に、井戸に捨てた妻の死体を次の日覗いてみるとネズミが大発生していたというシーンは夢に出てきそうなくらいエグい。物語はそこから、この親子の因果応報とも言うべき破滅への過程を丹念に辿ってゆくのですが、こちらもいちいち観客の神経を逆撫でするエピソードばかりで大変グッド。天井からいきなり血が滴り落ちてきたり、大量のネズミがパイプを伝って溢れ出てきたり、血だらけの妻がちょっとずつ迫ってきたり……と、ベタながらもツボはちゃんと押さえられていたのでけっこう怖かった。ここらへんはさすがスティーヴン・キング原作って感じです。ただ、さすがにオーソドックス過ぎるのが本作の弱いところか。あまりに王道過ぎて、こちらの想定した範囲を一切越えてこないんですよ。もう少しこの作品ならではと言う突出した部分が欲しかったかな。結論。まあぼちぼち面白かったですけど、一か月後にはきれいに内容を忘れてしまいそうな作品でありました。