2.本作は007シリーズのヒットに当て込んで企画されたらしい。公開年は「ダイヤモンドは永遠に」と同じ年なので、後追いとしては遅い方だと言えましょう。で、あのサイコ役者っぽいアンソニー・ホプキンスがスーパースパイとして成立するのだろうか、との興味で見てみたが結果は悪夢。まるで「サンダーボール作戦ブリキの太鼓版」。驚くほど頭が大きくて手足の短いホプキンスがボンドのまねごとをしてもまったくさまにならなっていない。運動神経もイマイチのようで特にアクションシーンのダサさは悪い冗談のよう。更に致命的なのは音楽が凡庸きわまりないことだ。インスピレーションのかけらもないなんともありきたりな楽曲ばかり。007シリーズのスコアを多数作曲したジョン・バリーがいかに作品の質を高めたかという点については常々感じていたことだが、その圧倒的な偉大さを再認識した。この作品は007シリーズというはっきりとした比較対象と比べてみて初めて楽しめる。特にアクションと音楽が素晴らしい「女王陛下の007」と比較すると同工作品の最高と最低が味わえる。他にも、カーアクションの代わりにヘリの飛翔するさまが実に活き活きと撮られていて、監督のメカ愛を感じる。女には興味ないようだ。これがMか、これがフェリックスか、とパラレルワールドのような感覚を味わうのは面白い。