1.《ネタバレ》 1988年、イラン・イラク戦争真っ只中のテヘランに暮らす女性シデーは、夫と一人娘のドルサとともにつつましやかに暮らしていた。だが、戦況は刻々と悪化、毎日のように空襲警報が鳴り響き、市民たちの間ではイラクから大量のミサイルが飛んでくるとの噂がまことしやかに広がっていた。そんな折、夫に召集令状が届き戦場へと派遣されることに。娘とともにアパートに取り残されることになったシデー。すると、娘のドルサが不穏な言動を繰り返すようになるのだった。なんと、この家に伝説の精霊ジンが密かにやってきて、私たちの大切なものを奪おうとしているというのだ。とても信じられないシデーだったが、その日から理屈では到底説明できないような不可思議が現象が起こり始め、やがて…。戦時下のイランを舞台に、お伽話の中にしか存在しないはずの精霊ジンに脅かされる母娘の恐怖を描いたホラー。そんな設定の目新しさに惹かれて今回鑑賞してみました。なんですけど、まあこの特異な状況設定を取り除いたら、後に残るのはごく普通のホラーでしたね、これ。恐怖の対象がアラジンでもお馴染みの精霊ジンとなってますけど、やってることは欧米の悪霊と全く変わりません(笑)。中東らしさと言えば、主人公の女性がスカーフを被らずに外に逃げてしまい警察に咎められるとこや、エアロビのビデオを隠れて見ているとこぐらい。それも物語上、さして活用されることもありません。それでも、そのジンが娘のイマジナリー・フレンドに触発された母親のストレスが生み出した、妄想オチのようにも読み取れるこの曖昧なラストにしたのはけっこう良かったかな。それにベッドに居ないはずの夫がいるシーンやジンが纏うスカーフに取り込まれるシーンなどなかなか印象的で、ホラー作品としては一応及第点はあったと思います。まぁぼちぼちってとこですね。6点。