1.《ネタバレ》 今年で高校を卒業するティーンエイジャー、バイオレットはその日、哀しみに沈んでいた。何故なら、唯一の理解者で子供のころからの大の親友でもあった姉が本当なら19歳の誕生日を迎える日だったから。そう、大好きだった姉は、自らも乗り合わせていた車で事故を起こし、帰らぬ人になっていたのだ。気付いたら、姉が死んだ場所の近くにある橋の上に立っていたバイオレット。あと一歩踏み出せば、全てを終わらせることが出来る――。そんな彼女を救ってくれたのは、たまたま近くをランニングしていたクラスメートの男の子、フィンチだった。変わり者として有名で、いろいろと噂の絶えない問題児でもある彼。でもその日から、バイオレットはなんとなく彼のことが気になるように。そんな折、授業の一環で地元の名所を二ヶ所以上辿り、二人一組でレポートを作成するという課題が出される。「僕と一緒に色んな所に行ってみないか?」。フィンチからのそんな提案に、最初は戸惑いながらもバイオレットは少しずつ受け入れてゆくのだった。美しい大自然の中で、次第に惹かれ合ってゆく二人。だが、フィンチもまた、誰にも言えない秘密を心に抱えていて……。交通事故によって姉を失い失意の中に生きていたティーンエイジャーが、ある一人の男の子との交流を通じて次第に再生してゆく姿を瑞々しく描いた青春ドラマ。率直な感想を述べさせてもらうと、まさに「ザ・王道」。よく言えば、最初から最後まで心地良く観ていられる安定の青春ラブ・ストーリー、悪く言えば、終始既視感満載のよくある感動もの。とはいえアメリカ郊外の豊かな自然の映像やセンス溢れる音楽などはなかなか美しく、主演を務めたエル・ファニングちゃんの魅力とも相俟って最後まで普通に観ていられました。まあさすがに、彼女の過去に主演した幾多の青春ものの二番煎じ感は否めないですけど。もう少しこの作品ならではと言った印象的な部分があっても良かったのでは。そう考えると、やはりソフィア・コッポラは偉大だなぁなんて思ってみたり。ただ、最後にこれだけは言っておきたい。ここでぶっちゃけてネタバレすると、彼女の彼氏となるフィンチ君は、物語の後半でなんと自ら死を選ぶのです。彼女の死を食い止めたはずの彼自身が自殺するという悲劇。きっと、作者は人が自ら死を選ぶということがどういうものか、そしてその行動が周りにどんな影響を及ぼすのかを描きたかったのだと思うのですが、いかんせんテーマへの掘り下げが浅すぎます。彼の自殺をあまりに軽く扱っていて、観る者の心に全く刺さらない。ノンフィクションならまだしも、それが作者の完全なる創作であるなら、人の死にはちゃんと意味を込めて欲しいと僕なんかは思うのです。監督にはもっと、この主題と真摯に向き合う覚悟が欲しかった。映像や音楽などにはなかなかセンスを感じただけに、惜しい。