7.《ネタバレ》 救いはない。
いや、この村には"死こそ救い"というべきだろうか。
弱者を搾取して支配し続ける社会はいつの時代も変わりはない。
それでも歪んだシステムに蹴りを入れて、新たな世代に希望を見せないといけない。
"ブロマンス"という男同士の特別な繋がり(≠同性愛)という概念があり、
2022年が『RRR』なら、2023年は『ゲゲゲの謎』がその象徴とも言えよう。
太平洋戦争の徴兵で上層部からの理不尽を目の当たりにした水木は、
誰も信用せず、強者に這い上がろうとする野心に満ち溢れた男。
だが、ミステリアスなゲゲ郎(=鬼太郎の父)の言動、哭倉村での数々の怪奇現象、
龍賀家の常軌を逸した因習によって自身の価値観を変容していく。
そこから熱いバディものに変化していくが、二人がそれほど暴れなくて物足りなさが残る。
胸糞悪い、ビターな展開がダメではなくて、そこからのカタルシスが弱い。
水木は哭倉村での記憶を消され、ゲゲ郎は呪いの依り代になって醜くなれ果て、
被害者でもあり加害者でもある沙代は無残に死に、何の落ち度もない時弥は時貞に肉体を奪われる。
幽霊族も外から拉致された一般庶民も製薬の材料として利用され、誰一人として救われない。
だが、弱者を顧みず、欲望の赴くままに食い物にしてきた外道にはいつかツケを支払わないといけない。
そうやって世の中は少しずつ変化してきた。
舞台から70年後の現代、ちょっとはマシな世の中になっただろうか?
完全オリジナルストーリーでありながら原点である『墓場鬼太郎』に繋がる構成といい、
スタッフの鬼太郎へのリスペクトが大いに感じられた。
原作そのままだと水木は散々な扱いを受けるようだがそこは一切描かず、
その後を視聴者に委ねるあたり優しさはある。
歪んだシステムに抵抗した登場人物たちが少しは報われて欲しいと願ってやまない。