3.《ネタバレ》 伊藤潤二原作のホラーマンガシリーズ「富江」の映画化第3作で、これが清水崇監督の劇場版初監督映画ということになるらしい。題名からすると前年の第2作と関連がありそうだが実際は全く関係ない話になっている。
物語としては原作のどのエピソードとも言いがたいが、肖像画とか顔から毛髪といった個別要素は拾っている。大まかにいえば男3人と、それぞれに関わる女性のエピソードを連ねた形になっており、男女の愛憎がらみなのが富江らしい雰囲気を出している。特に今回は女同士の争いに重点を置いて、人の心の執着心や嫉妬心が富江を生み出すのだ、というような教訓話にしたようにも見えた。ただし富江を生み出していたのは若手女子だけで、中年以上は単に排除されて終わりになるようで、子離れできない母親の末路は因果応報・自業自得という印象だった。最初の男の母親(演・大塚良重)が無事だったらしいのは案外普通の親子関係だったということか。
なお原作との関係でいえば、口紅だけで富江が伝染するのはあまりに安易な展開であり、違う女優でも目元にほくろがあれば全部富江だというお手軽感覚にも納得できない。また最初は東京都内の話だったのに終盤で里帰りするのは「呪怨2」<OV>(2000)で見られた地方出張のようなものかと思うが、個人的好みとしては都市的環境の中で終わらせてもらいたかった。
今回の富江に関しては、外見的な派手さはあまりないが目つき顔つき話し方笑い方の印象は良好で、口先で人の感情を翻弄するのが小気味いい。耳元でささやかれるのが神経に響きそうな感じで、殺し文句の「好き」というのは自分も言われたい(が向こうも相手を選ぶとは思われる)。洗面器からじっと見ていて何気にまばたきするのも愛嬌があって、個人的には今回の富江がシリーズ中で一番好きだ。
ちなみに電柱の張り紙など見ると、呪怨シリーズに通じるおふざけ感が出ていたようでもある。自宅に帰った男が持っていた買い物袋からネギが出ていたのはマンガのようだった。