1.《ネタバレ》 切ない。画もきれい。音楽もよい。でもなんだこのシュチュエーションは。「みゆき」のような展開をみせるのか、はたまた別の展開が用意されているのか期待してみていたが、ほとんど何も起こらなかった。生活感を出すためなのはわかるが、冒頭の無意味な妹の入浴シーンや緒方直人があの童顔で、ちゃぶ台の上の冷奴を瓶ビール片手につっついたりするもんだから余計に違和感が出る。若くして両親をなくした兄妹という設定はいいんだけど、昭和30年代の年季の入った夫婦のような佇まいはどうも馴染まない。その上、兄を想う特別な理由でもあるような献身的な妹がある日、男の元へ出てゆくのも解せない。行って戻ってでは市川監督らしくない。結婚を先延ばしにする兄への想い的なものがほしかった。ただ妹の心象変化として喫茶店でのシーンなどはうまさが光る。背筋をピンと伸ばした硬い姿勢から、ある時フッと背筋を崩す描写などは見事。細かいところでは市川監督らしさが覗えるのだが、ラストの展開といい、どうも腑に落ちないところも多い。話としては散漫とした印象は拭えません。やっぱり設定に無理があったのかな・・。情緒のある美しい画はまちがいないのだが。