2.《ネタバレ》 敢えて言うまでもないが、「ブラック・ジャック」は“神様”手塚治虫が生み出した漫画史における「宝」である。
そのアニメ化や映像化はこれまで数多くされてきたが、原作の崇拝者としては、とてもじゃないが期待は出来なかったし、食指が動いたこともない。
今作を見たのも、ケーブルテレビでたまたま見られたからだ。
率直な感想としては、「意外と良かった」のではないかと思う。
劇場作品というよりは、OVAのレベルを出ない感はあるが、毒々しいほどの劇画チックなキャラクター造形は、「ブラック・ジャック」の世界観に対して決して間違ってはいない。
激情的なシーンでことごとく使われる静止画止めに、少し昔の「ルパン三世」のTVM版を彷彿させられたが、なるほど監督が同じ人なのか。(これはこれで味があって嫌いではない)
超絶的な世界記録を連発する「超人類」たちが、巨大製薬会社が生み出した新薬の薬害被害者だったというプロットは、突飛ではあるけれど、昨今のドーピングの氾濫などを踏まえると、リアルに感じる部分もあり悪くなかったと思う。
ただし、もう少し後半の展開に「厚み」が欲しかったとも思う。
クライマックスの乗り越え方や、クライマックスそのものがありきたりで軽薄だった。
そのあたりが詰まっていれば、かなり良い映画になったのではないかと思う。
繰り返しになるが、方向性は決して間違っていない。