14.《ネタバレ》 冷静に見れば、本作は可も無く不可も無い、凡作のはずです。
設定はありがち、何でもあり、展開も凡庸で無難に収まってしまいます。
では、いったいこの映画の何が、私を高揚させたのか?
答えは「オタクの趣味における思考回路(妄想)をそのまま具現化したから…」でしょう。
「趣味」とは「自己満足のみで成立しうる自己実現」だと、私は思います。
同じ分野であっても、人によって感銘を受ける部分や影響される箇所は多種多様です。
それでも「己の価値観に自信や満足感を抱いていられる状態」を、人は趣味と呼ぶのでしょう。
しかし、同分野において価値観や意思を共有出来る相手が見つかった時、趣味は趣味の領域を超え、一種のコミュニティへと進化するのだと思います。
恐らく、その空間が出来たことにより生まれるのが「連帯感」なのでしょう。
そして、連帯感は個人の心理にも多分に影響をし、「承認欲求」や「自己顕示欲」という物を生み出すのではないかと思います。
承認欲求や自己顕示欲というのは、多かれ少なかれ、人間には誰にでも備わっているものです。
趣味においても、それらの欲求を上手に解消している人は、数多くいます。
しかし、趣味の道を究極的に進んでいる、所謂「オタク」と言われる人たちは、その欲求も比例して強くなりがちです。
自称・他称問わず「オタク」と言われる人間は、それだけ一つの事に情熱を注げるのだ…
という捉え方もありますが、その強すぎる情熱が仇となることも、少なくはありません。
周囲の不理解や蔑みに直面すれば、自己満足の世界とは言え、悲しくもなるものです。
そういった意味で本作は、そんなオタクの鬱積を妄想によって晴らしている、ブラックユーモアに溢れているようにも見えます。
現実社会では有り得ないことも、夢の中でなら可能です。
自分の得意なこと、好きなことを生かして周囲に認められれば、これほど喜ばしいことはありません。
そういった「一途な想い」を、ヒーロー物として分かり易く具現化しがた故、私はどこか興奮が抑えられなかったのかもしれません。
ある意味「信じていれば夢は叶います」と謳う、某ネズミーさんのお姫様映画に通ずる物もありますね。
私は「信じていれば夢は叶う」とは思いませんが、「信じる心は勇気と活力を与える」と言うならば、諸手を上げて賛成しちゃいます。