1.《ネタバレ》 19世紀のパリにあらわれた巨大な資本=百貨店と周りの小売店との軋轢を描いた作品です。現題「ボヌール・デ・ダム」とは“ご婦人の幸せ”という意味で、この言葉をキャッチフレーズに百貨店は隆盛を誇りますが、おいおいちょっと待て、わしらの生活はどうなんねん、とミシェル・シモン演じる小売店のボーデュが起ち上がります。そんなもん構ってられませんぜ、とアルベール・プレジャン演じる百貨店経営者ムーレ。ところがボーデュの姪ドニーズが百貨店に雇われ、ムーレにほれられちゃってさあ大変。おっと、あらすじを書いている場合ではないですな。私はカイヤットの作品を見るのはこれが初めてですが、ラストの風刺は強烈ですね~。ドニーズの人生観、労働感にほだされ、従業員あっての百貨店であることを従業員の前で高々と謳うムーレ。人間賛歌のセンチメンタルなラストかと思いきや、そのシーンに挿し込まれるのが、ボーデュが荷車にひかれ息たえるシーン。そんなことを知らない百貨店では、壮大な舞踏会が開かれ、華やかな音楽とともにFIN。ムーレの栄華、ボーデュの死が象徴する、巨大資本の光と影。うーん最後になって「貴婦人たちお幸せに」というタイトルが効いてきたのでした。