1.《ネタバレ》 剣道部団体優勝のため機械のようなストイックさと禁欲主義を貫く国分の人となりと、「そんな国分でもただの男」と認めたがろうとする賀川の嫉妬を描くお話。「国分だってスカートの中に手くらい入れるよ。だって人間だもの」というのが賀川の願いであり、国分という偶像を切り崩す手段。技術は完璧でも人格まで完璧な人間がいるはずがない、という考えで賀川は安心したかったわけですね。しかし国分さんは本当に完璧主義の完全無欠な男でした、というのが本作のオチ。飛べなくなった鳩を哀れんで絞め殺そうとするなど、自分なりの哲学が完成していた国分さんには、色香の誘惑など通じなかった。通じなかったどころか最後には自分の監督不行届のために自決を選ぶ。綺麗なものが綺麗なままでいられないなら死んだほうがマシ。もはや賀川なんぞには敵うはずもないほど、国分の精神は高みに達していた、というわけですね。ちょっと死というもの美化しすぎかなという気もしますが、エンディングには、国分を理解してやれなかった部員たちの悔しさが静寂な部室にあふれ出し、悲痛な余韻が染み渡ります。主人公の提示が遅れてるため物語前半がやや退屈に感じるのが難点。