1.《ネタバレ》 戴冠式があって、政治的な汚れが彼女に迫ってくるわけ。ふとヴィシー政権下のパルチザンを連想した。男装の罪というのが、なにやら深い。女装すると牢番に嫌がらせを受けたなんてこともあり、まあそれだけのことかも知れないが、一度女装に戻ってから、また自分の意志で男装となり、死を選ぶ、ってなにか意味深そう。彼女のパラノイアの重要な部分に「男装」があったのではないか。ヨーロッパ中世における女性の位置についての考察が必要だろうが、国の解放と女装からの解放が、彼女のなかではパラレルだった。火あぶりを怖れ、ラスト炎のなかで「イエス様!」と叫んで映画は終わるのだけど。人々が中世の薄暗さのなかにいる感じは随所で出ていたが、どうもサンドリーヌ・ボネールは最後まで非中世的で(またあえてその効果を狙ったようにも見えず)、しっくりこなかった。