4.《ネタバレ》 冒頭の展開から「ハックルベリー・フィンの冒険」の女性版のように、二人でアチコチを旅するお話なのかな? という印象を受けていたのですが、ロードムービーではありませんでしたね。
舞台となるのは、主人公が辿り着いた先の、もう一つの家。
自殺、母親殺し、差別など、色々と重苦しいテーマを扱っているのですが、全体的に落ち付いた雰囲気と優しさを備えた、良質な作品だったと思います。
こういった「家出モノ」映画においては、最後は何だかんだで我が家に戻るパターンが多いように思える中で、本作の主人公が「養蜂場に残る」事を選択したのは、大いに納得。
「私には三人の母親がいる」と語るラストのモノローグも、心に響くものがありました。
その一方で、旅立ちのキッカケとなったロザリンの存在意義が、中盤以降は薄まっているように感じられた事。そして主人公の父親が哀れに思えてしまい、どうにも後味が悪くなってしまった事は、残念でしたね。
勿論、後者に対しては、娘に体罰まで加えている以上は自業自得であり、同情などすべきではないとも思うのですが「妻に続いて娘にまで見捨てられてしまった」となると、流石に可哀想。
身勝手で不器用ながらも、本人なりに娘を愛しており「誕生日おめでとう」と呟くシーンなども描かれていただけに、スッキリしないものがありました。
こういった場合に、悪役となる側にも同情すべき点を残しておくバランスは好ましく思っているのですが、どうも今回はそれがマイナスに作用してしまったように感じられます。
主人公が「シュープリームス」について語る小ネタ(話し相手は「ドリームガールズ」に出演したジェニファー・ハドソン)にはクスッとさせられましたし、黒人青年との仄かな恋心が描かれる場面なんかは、とても良かったですね。
作中で人種差別問題が繰り返し提起されていただけに、主人公が偏見を越えて彼に愛情を示してくれた事には、癒されるものがありました。
蜂蜜を男の指から舐め取ってみせるダコタ・ファニングという、ドキッとさせられる絵面が飛び出す辺りなんかも、程好いアクセントになっていたかと思う次第です。