3.マッツ映画4連投。この映画は、「春の祭典」の初演シーンをかなり史実に忠実に再現しようと頑張った、その冒頭のシーンだけで存在価値のある作品でしょう。劇場の美術といい、もちろん舞台美術といい、開始直後に離席してしまうサン・サンーンスと思しき観客とか、伝えられる話はとりあえず盛り込まれているようです。ちょっと感動しました。正直なところ、3大バレエの中では、個人的には「ペトルーシュカ」が1番好きであり、「春の祭典」は3番目。だって、なんかつまんないんだもんね、聴いてても。曲想が目まぐるしく変わり飽きさせないけど・・・。でもまあ、ストラヴィンスキーの音楽は基本的には好きだし、オケで吹いた思い出深い曲もあるので、なんつーか、まあ、ちょっと贔屓目に見てしまいます。とはいえ、シャネル役の女優さんは美しいけれども、時々久本雅美に(原因は口元かなあ)見えてしまったり、ディアギレフがイマイチ迫力不足だったりはいただけない。『ニジンスキー』でアラン・ベイツのを見てしまっているから余計にね。ニジンスキーもこの後、坂を転げ落ちるように不幸になっていくわけで、そんなこんなで、この映画の背後にあるいろいろな人や物の動きに思いを馳せると、それはそれで感慨深いものがあります。そして、マッツ・ミケルセンですが。ピアノの演奏シーンがいくつかありまして、長いワンショットの中で彼は実際演奏しています(音は違うでしょうが)。その演奏シーンが素晴らしいのは、何より、彼のピアノの弾き方にあります。多分、演奏経験があるのでしょうね、少しは。手首がきちんと上がって固定されています。これは、ちょっとやそっとの練習で出来るものではありません。こういう映画では手首が下がってぶれた動作を見せられると思いっ切り興ざめなのであります。そこがきちんとクリアされている。これは結構些細なことの様で、大きいですね、私的には。彼はかなり器用な俳優さんだとお見受けしました。うーん、マッツ、恐るべし。