1.《ネタバレ》 原作は当然未読。
原作に面白みがあるので、ストーリーの進行を追っていけば、前作同様にそれほど飽きることはない。
しかし、基本的にはストーリーを追っかけているだけの映画であり、映画としての質はそれほど高いとは思えない。
例えば、組織に編集部が脅迫されていたと思うが、切迫された“恐怖”というものが感じられず、追い込まれた感があまりない(怖いのは直接攻撃のヒットマンだけであり、心理的な恐怖が欲しいところ)。
また、組織についての“不気味さ”なども感じ取れない。あの程度では、ただの犯罪グループを摘発したくらいしか思えない。
とてつもない巨大な組織を相手にしているという“怖さ”がないと面白みが半減するだろう。
法廷パートにおいても、『これで勝てるのか?』というドキドキ感を生むほどの緊張感や焦燥感がない。
隠し玉がDVDくらいなのでもっと焦りが欲しく、勝負の鍵となるギリギリに掴んだ精神科医のパソコンの逆転劇を効果的に演出して欲しいところ。
しかし、ハリウッド映画のような洗練された感はないが、小細工せずにストレートに製作された映画というものも懐かしいようでありそれほど悪くはない。
ラストもハリウッド映画ならば、部屋に入れたり、キスしたりといった小細工をしそうだが、「また今度…」「きっとだぞ」と言って別れる辺りのあっさりした感じも悪くはなかった。
結局、二人の関係はメールや言葉を交わさない視線のやり取りのみであり、精神的な部分・心の中での絆は深いと思わせるものではあるが、直接的なやり取りが少なかった。
直接的なやり取りが出来ないということは、リスベットが幼い頃に受けた心の傷というものがかなり根深いということなのかもしれない。
ほとんど笑わないリスベットが笑顔を見せたのが、父親が死んだ時などの数回というのも印象的なものとなっている。
彼女は確かに勝利をしたのかもしれないが、本当の意味で勝つことは難しいのかもしれないと感じさせる。
背中のドラゴンタトゥーのように、心に刻まれた傷は消えないのか。
ただ、ミカエルだけではなくて、保険会社のかつての上司、親身になってくれた医者、疫病神、ボクサーなど、彼女を支えてくれた人たちの存在も彼女の心に刻まれただろう。