4.《ネタバレ》 原作者本人が脚本を書いているので基本的には原作通りと思われる。背景にある死生観や人生観については正直よくわからなかったが、少なくともストーリー的には「子はかすがい」というのが重要事項だったように見えており、ハネムーンベビーができるのかと思っていたら最後まで出なかった。代わりに従前のどうでもいいこだわりを捨てて、新しい炊飯器を買い直すことから始めましょう、という形で終わったらしく、これはこれで前向きなお話と受け取れる。ラストの妻の台詞が作為のない感じで好印象だった。
この夫婦に関しては、コメディ調ながら人物像は極めて生々しく表現されている。序盤で徹底的にどうでもいい会話をしているあたりではどっちもどっちという感じだったが、向こうの世界では地が出たということなのか、夫の方が圧倒的に馬鹿に見えている。個人的にはこの馬鹿さ加減が不快要因になって素直に共感できないところもあったが、まあこれは劇中の赤青の区別にも関わるものなのかも知れない。自分は赤にはなれないのだろうと思われる(ヨシコちゃんと同じ側でいいです)。
一方で劇中世界の設定に関しては、地獄というものの性質がどうなっているのか全く理解できない(魂を準備する場所に地獄というネーミングは適切?)が、映像的には異界感がほどよく出ており、また異種族間の交易の危うさといったものが表現されていたのは必然性に欠けるが面白い。これに対する序盤の現実世界でも、半端な場所設定(五反田?)や何の変哲もないショッピングセンターの風景とあわせて、倦怠感にまみれた雰囲気が視覚面でも印象的だった。
なおコメディ場面で笑ったのはマサハル君の退場、甘エビの食前処置と人物写真の説明だった。