1.《ネタバレ》 舞台劇のように見えるが実際そうだとのことである。初演が2007年というわりに、マサヒコという男がマッチと呼ばれていたのはかなり古い時代のものに見える。
背景設定について真面目に考えるのは無意味かも知れないが、人々が次々死んでいく状況自体は原発事故を思わせるものがある。しかし死に方は放射線障害のイメージではなく、そもそも元になった戯曲は震災前からあり、映画の撮影も2010年だったようなので関係ないらしい。また劇中の都市伝説の真偽に関してもよくわからなかったが、それより結局、入院患者の期待が実体化した形で終わったのではないかという印象が強い(少し前に見た別映画の「だからみんなも死んでください」のような感じ)。
内容的には序盤の女子3人と三角関係の3人の会話が単純に面白いが、特に三角関係の男はこういうのが近場に本当にいるので他所事とは思えない。この男の人格や風貌が役柄に全くそぐわないのも不条理で、ここはコメディにふさわしい茶番感を出している。ただしそういう流れで見ようとすると、後半はそれほど可笑しいところもないようで退屈になる。
その後半では、死に際して人は何を思うのか、ということが描写されていたらしい。皆さんそれぞれこだわりがあったようだが、生きていること自体に執着するものがいないのはあまりにも軽薄な印象だった。人が死ぬのは当たり前だから今死んでも同じこと、というのは間違っていないにしても、それは現時点で何も背負っているものがなく、かつ今しか見ていない人々の発想である。劇中最も生きることに執着していたのは入院患者だったはずだが、この人物の存在が“生きろ”的なメッセージにつながっていたようでもないのがあくまでとぼけた感じを出していた。
なお登場人物では(女子限定でいえば)、個人的には序盤の女子大生3人(高橋真唯・田島ゆみか・池永亜美)に好意的なのと、掃き溜めに鶴という風情の病院スタッフ(青木英李)が目を引いた。どうせ最後と思えば付き合ってくださいくらいは言ってみたくなるが、断固拒否だったのも最後だからこそのこだわりがあったということか。