2.時折挿入される、昭和期を思わせる解像度の粗いフィルム風映像。
その中に映し出される、青春時代の母親を演じる堀北真希の美貌が
ノスタルジックに映える。
彼女のこれまでのフィルモグラフィにも拠るのだろう。
あからさまな時代の演じ分けをしない分、彼女の二役は違和感がなく新鮮だ。
あるいは中森明夫の書く通り、彼女のスター性ゆえかも知れない。
カラフルな柄物のカジュアルウェアが、一方で黒い礼服姿のイメージを引き立たせる。
そうした衣装の演出に関しても吉田監督の拘りがうかがえる。
が、音楽の入れ方、特に挿入歌の大仰な使い方などは想定通りすぎてつまらない。
余貴美子の手料理を噛み締める堀北。
そしてその料理へのお返しにスーパーで肉を買い、パン粉を付け油で揚げる彼女の横顔。
そういう黙々とした、淡々としたさりげないシーンの積み重ねでこそ泣かせて欲しい。