1.《ネタバレ》 ラジオの生放送中に爆破予告電話を受けたキャスターの姿をほぼリアルタイムで追ってゆくサスペンス映画です。
ところどころ「ん?」って頭をヒネっちゃう箇所が無きにしもあらずですが(テレビのニュースキャスターへの返り咲きを目論むキャスターはラジオ放送を放り出してしまいますが、番組が継続した様子がありません)、とにかく刻一刻と状況が変化してゆく、そのピリピリとした異様な緊張感に釘付けになります。
テレビの生放送でテロリストを説得してエンターテインメントに仕立て上げようとするキャスターが、逆にどんどんと追い詰められてゆく、事の重大さがのしかかってくる、その焦燥感がダイレクトに伝わってきます。
ですが、クライマックスに至って映画は向いている方向を思いきり変えてしまいます。「あれれ?」って感じで。韓国映画お得意「情」の世界に突入する事で問題がすり替えられてしまうような、大きな違和感。
爆破テロを行った人物に同情した上で最終的にキャスターの取った行為、あそこには社会的な意志があるようで、その実、全く無いようで。
テロリストにも理由がある、テロリストを生む原因を作っているのは誰だ?って事で、自らも権力の元で翻弄されている状態を実感し、って、でも、あのニュースがなければ彼は絶望しなかった、あの選択はなかったと考えると、ただの弱者達の自滅と自己完結で閉じただけの物語になってしまうんですよね。やたらパーソナルな思考で閉じてしまっている状態。
アレをした事で、じゃあ彼は何を成し得たのだろうか?と。
「権力に屈しなければならなかった人々の悲劇の物語」とするにはあまりに事件の大きさと個人の意志が及ぶ範囲の小ささのバランスが取れておらず、不恰好な脚本の姿が見えるような感じがしました。
っていうか、犯人があの立場でどうやってあれだけの威力をもたらす爆薬を手に入れ、そしてあれだけの範囲に渡って誰にも気付かれずにそれらを仕掛けられたのか、全くもって謎なのですが。