2.あまり気持ちのいい映画ではなかった。というのが正直な感想。
「実話」だからこその、決して避けられない登場人物たちの人生における“短絡さ”が、何だか無性に居心地の悪さを感じさせる映画だった。
「創作」に携わる者のジレンマによる闇の深さは、当事者にしか分からない。
しかし、その闇を抱えるのは、必ずしも“真の作り手”だけのものではないということ。
何も生み出すことが出来ない者が犯した愚かな罪。
“夫”は間違いなくロクデナシで、同情の余地はないけれど、彼がもたらした「功罪」により、“ビッグ・アイズ”という芸術が世に広まったことも事実。
彼の「悪意」が一体どの段階から存在していたのか、それは実際のところ誰にもわからない。
どこかのタイミングで何かが間違っていなければ、この夫婦は、もっと幸福な道を共に歩めたのかもしれないし、そうではないかもしれない。
子どもの大きな瞳で見据えられ続けた苦悩の日々は、観ている側としても苦しいものがあった。
そのリアルな苦しさを抱えた人間の無様さこそが、ティム・バートンが珍しく実話を題材にしたこの映画で描きたかったことだろうし、そういう意味ではしっかりとティム・バートンらしい映画に仕上がっていると言えるのだとは思う。
でも、この監督の一ファンとしては、これまでの作品群においてどんなにダークな世界観を描いたとしてもあり続けた小気味よさが無かった今作が、映画として単純に楽しくなかった。