1.《ネタバレ》 アイスランドの映画である(寒い)。登場人物の様子からして近代以降の話には見えないが、Wikipedia, Den frie encyklopedi(ノルウェー語版)ではなぜか細かく1698年(元禄年間)のアイスランド北東海岸と特定している。首都からは島の反対側なので、絶海の孤島の中でもさらに辺鄙な地方ということらしい。ちなみに国王と言っていたのは恐らくデンマーク王のことで、保安官はその国王が任命した役職ということになる。
同時代のノルウェーの捕鯨船ではグリーンランド人が雇われていたのに、ここの住民は海の対岸にどういう人々が住んでいるかも知らないようで、それでもヴァイキングの子孫なのかと言いたくなる。冬の間も氷の下に魚はちゃんといることを、知っている人はいたらしいが知らない人もいたようで、今後はここの漁師もシロクマ少年を真似して魚を釣れば、住民の冬の暮らしが少しは豊かになるだろうと思った。ちなみに村人が悪魔排斥運動に熱中していたのは、冬の間はひたすら暇だったからだと思っておく。
内容としては予定通り、地元少年と異邦人の微笑ましい友情物語である。シロクマ少年が悪い奴でないのは顔を見ても明らかだが、地元少年は助けられた恩義もあり、また地元民ができないことをいろいろやってみせたことで率直な敬意も感じていたかも知れない。なお題名のikingutは今も普通に通用するグリーンランド語のようである(ただしWiktionary, the free dictionaryによれば綴りはikinngut)。
社会的メッセージという面で見ると、子ども向けに素朴なレベルで異文化共生を訴える映画になっているが、相手が子どもだからか女性はわりと早くから融和的で、問題は男連中の態度ということかも知れない。しかし排斥運動を主導した男などはあからさまに偏屈オヤジ風で、これが大勢になるはずがないのも見えているので安心できる。
ただ最近はやりの労働力受入れとか移民を許容するかどうかの問題に、この話は直接つながらないような気がする。この映画では少年1人だけで、たまたま善良で気配りができてコミュニティにも貢献できる人物だったので問題ないとして、集団になれば個々の人がいい人というだけでは済まなくなるだろうが、この映画の時点で製作側がどこまで考えていたかはわからない。
ほか余談として、地元少年の姉は14歳の設定だそうだが、「15歳、アルマの恋愛妄想」(2011ノルウェー)を見たこととの関連もあって、北欧の少年少女は早熟なのかと思わされた。相手は北欧風の美少年(ちょっと微妙)だが、こんなバカはやめておけ。世界はもっと広い。