1.《ネタバレ》 主演のビビアン・ソン(宋芸樺)は知らなかったがこの映画で人気が出た人らしい。2018年にはSNSでのちょっとした発言が大陸側で大々的に非難され、火消しをしようとしたら今度は台湾側で叩かれて、総統府の報道官がとりなしのコメントをした事件があったとのことで、やはり大陸での営業はリスクが大きいということだ。
それはそれとして映画そのものは青春恋愛映画であって、邦画なら少女マンガ原作かと思うがオリジナルらしい。主人公が90年代を回顧する話なので懐古趣味的なところもある。
時間が140分もあるのはさすがに長いが、前半のラブコメ部分にはけっこう笑わされる。恋愛に関する格言のようなのは日本の青春モノにもあるかも知れないが、日本にはなさそうな「水風船」の話もなるほどと思って感心した。また終盤の「順風満帆 一獲千金」(字幕)のところは笑い泣きさせられた。
ただ途中で嫌な感じだったのは、転任してきた指導主任の態度(と顔)を見て、これが中華圏の抑圧手法なのかと思わされたことだった。劇中では民衆側が勝っていたが、現実社会の政治問題なら権力側の実力行使もありうるのではという気もして、こんな映画で思うのも何だがかなり危なっかしく見えた。まあ今は台湾でも自由で公正な社会が実現しているはずで、劇中のイケメン優等生のいうとおり、誰が言ったかで正不正が左右されない世の中であってもらいたいと思った(日本もそうでなければと思った)。
登場人物として、主人公の林真心(英語版ではTruly Lin)という人は、中盤で髪型を変えてからいきなり可愛くなったように見せていたが、個人的感覚としてはそれ以前からちゃんと可愛く見えていた。自分としても大人の場面は同じ演者にして、最後に昔のままの笑顔がよみがえった形にしてもらいたかった。
ほか雑談として、主人公のプロフィール帳に「喜歡の人:??」「討厭の人:我哥」(私の兄)と書かれていたのは目についた。話によると台湾では「の」という字が変に好評で(形がカワイイか何かの理由で)、特に必然性なくやたらに使われているそうで、現地を知る人々には常識かも知れないが個人的には初めて見た。
また原語は全く知らないが、「私、かわいい?」という字幕のところは「我可愛嗎?」と言ったように聞こえた。「可愛」は漢字圏の共通語なのか。ちなみに「真心」は日本語のまごころというより“誠実”というような意味らしい。
[2022/06/04追記] 上では劇中の抗議行動が「危なっかしく見えた」と書いたが、その後に「私たちの青春、台湾」(2017)という映画を見た結果、この映画も劇中年代というより製作当時の社会の雰囲気を反映していたのかも知れないと思った。ただしその後のことを考えると、やはり場合によっては危ないというしかない。