1.《ネタバレ》 人種差別が根強い1920年代のニューヨーク。肌の色が薄いことから白人のフリができる二人の黒人女性が10数年ぶりに再会する。一人は元来の黒人コミュニティで家庭を築き、もう一人は白人男性の妻として…。対照的な生き方の二人をクラシカルなモノクロ映像とジャズピアノで時代を彩る。波風を立てないように日々を生きてきたアイリーンにとって、クレアの快活で奔放な振る舞いに危うさを感じながらも、差別を恐れるあまり己を偽り深いギャップに苦悩する彼女に共感する、その微妙な距離感が上手い。だが、クレアの夫は根っからの差別主義者で、肌の濃さを問わず"一滴でも黒人の血が入っていること"に嫌悪する男。終始どこか不穏な空気が漂い、静かに悲劇に繋がっていく。初監督を務めた女優のレベッカ・ホールは、母方の祖父が肌の色が薄い黒人であり、アイデンティティの拠り所を深く抉り取る。自分が何者であり如何に生きていくかを模索する。