2.絵本を開いたような可愛らしい映像ばかり。タジキスタンって不思議な場所だな、と思いながら鑑賞していたが、実はこの映画を撮るために巨大なセットを作ったそうで、いろいろな場所のいろいろな時代の建物を集めて創造された村らしい。 描き方はファンタジックでユーモラスだが、実はとても過酷で現実的な物語。アーヴィングやボリス・ヴィアンの小説を思い出した。ときどきファンタジーを厳しい現実に向き合うための一つの方法論として使用する作品があるが、この映画はそのもっとも成功した例だろう。楽しく可愛らしく描かれる、哀しく醜い物語。監督は人生が過酷で悲惨なものだと知っていて、それでもなお人生を愛したいと思っているんじゃないだろうか。ラストシーンでは奇跡が起きて主人公が閉鎖的な村から脱出することができるが、そこには作り手の願いが込められているようで、なんだかとても切なかった。