4.私は中期の一本を除いてシリーズをほとんど見たことがありませんでした。子供時分、大人たちが笑っているのを横目で見ながら、なぜ面白いのかがまったく理解できませんでした。仕事もせず、遊び呆けて、家に帰っては面倒を引き起こしてばかり。そんな寅さんが嫌いでたまらなかったのです。第一、よくみると目つきだって悪いじゃありませんか。大人になってもこんなつまらん映画見るものかと心の中で思っていました。
ところがどうでしょう。今になってみると、寅さんの世界になんと惹き込まれることでしょう。「そうかそうか、オメエも人情の機微が分かるようになったのか」なんて寅さんに言われてしまいそうですが、笑って泣いて感動する、そんなことを心の底から思えるように。第1作をみて、そんなことを感じました。皆さん、当然ながら若いです。その中でも、さくら役の倍賞千恵子さんの美しさ、可愛らしさが強く印象に残る作品でした。
(2020年1月再見。7点→6点へ減点。もう50年も前の作品になるんですね。
シリーズ中でもこの寅さんは荒っぽいです。ソフトになる前の、荒削りな感じで、おいちゃんおばちゃんじゃなくても「出てってくれ」と言いたくなっちゃいますよ。今ならロクデナシとか人間のクズっぷりがすごいとか叩かれるキャラです。やたら「バカだね〜」と言われているのもいい気分はしません。
さくらと博の結婚にまつわるエピソードと、さくらと寅の再開シーンは白眉と言えるんでしょうが、これじゃ寅さんが人情味はあってもただの迷惑男で終わっちゃいます。弟弟子とケンカしても、ラストで元に戻っていたりするところも違和感が。倍賞千恵子も、最近の老け顔が頭にこびりついていて。いやはや時の流れというものは怖ろしいもんです。)