6.《ネタバレ》 ◆飛行機がタイムスリップする。寝ていた人は助かり、起きていた人は消失。消失した人はどうなったのか?しかも肉体と服が無くなっているという不思議さ。服の中身、歯の矯正器、ペースメーカーは残されたまま。この謎は謎のまま。S・キングに細かいことを望んでも仕方がありません。でもこの作品は整合性が取れている方です。
◆過去は過去のまま取り残されて存在する。その取り残された過去の時空をバクテリアのように食べ尽くすのが無数のランゴリアー。歯と毛だけの外見。イメージが膨らみますが、CGがしょぼいのでがっかり。全然怖くないのです。
◆時空の裂け目を通って、未来に戻ることが出来た。だがそこは無人の世界だった。そこへ時間が未来に追いつくというアイデアは秀逸。感心しました。飛行機は無事生還したが、消失した人々は戻って来ないと解釈しました。
◆登場人物はほぼセオリー通り。自己犠牲で英雄となる特殊工作員、状況を素早く理解する推理小説家、盲目の超能力少女、心に傷をもつパイロット、そして最重要人物がイカレたビジネスマンのトゥーミー。父親から精神的虐待を受け、「大物になれなければ、怠け者としてランゴリアーに喰われてしまう」という強迫観念に取りつかれている。彼の存在がランゴリアーを引き寄せ、飛行機をタイムスリップさせたのかは不明だが、彼が偶然に乗り合わせていたのではないことは確か。作者は「心の傷」と「取り残された過去」を対比して提示している。「取り残された過去」は各人の「心の傷」でもあるのだろう。心の傷が妄想を生み、時には時空の裂け目も作り出していますのだろう。
◆トゥーミーは錯乱して少女を刺す。少女はトゥーミーを囮として利用。このあたりの展開はスリリング。でも少女は助からなかった。少女は自分は助からないと知りながら、皆のためにトゥーミーを操ったのですね。そして生還のためには、更なる自己犠牲が必要だった。眠りについた皆を起こす役目の人は消失する運命。それは暗殺者でもある工作員の過去の罪の贖罪でもあった。芽生えはじめた恋も儚く消える。ソツのない展開ですが、感情移入するほど深くは描かれてはいません。監督の技量不足でしょう。才能のある監督がリメイクすれば名作になる可能性があります。