2.これは『東京五人男』よりも終戦直後なのか。映画そのものより、製作会議のほうに興味が行っちゃう。とにかく負けたほうが復讐する話は駄目らしい、そもそも刀を振り回すのが駄目らしい、と不許可条項を列挙していって、しかしそこは伝統ある日本の時代劇、あれが駄目ならこれと引き出しは豊富だ。人情ものなら大丈夫そうだ、占領国アメリカには『キッド』もあった、何度も繰り返し映画化された「三人の名付親」の話を思い出したものもいただろう(たとえばW・ワイラーの『砂漠の生霊』)。荒くれた男たちが赤ん坊をあやす図は、いかにも平和国家に改心した日本にふさわしいのではないか、などと会議を早々に済ませ、数週で一本の映画を撮り上げてしまう当時の映画会社のバイタリティに感動する。「実は大名の御落胤」ってあたり、かえって終戦直後で大時代な設定を使えたって気もした。翌年ぐらいになると、これは封建的だろう、と組合からクレームが付いたんではないか。