7.(2005年、テレビ録画視聴時のレビュー)
1945年の夏、終戦間近の宮崎県・霧島地方。沖縄戦も失敗し、すわ九州に上陸かという切迫した時代を描いている作品です。
太平洋戦争を背景にしながらも、反戦や平和をテーマにしてはいません。あくまで、その時代に必死に生きる人たちを描くことに徹しています。
この作品は、黒木和雄監督の実体験に基づいて作られているとのこと。康夫という少年は架空人物ですが、黒木監督自身の少年時代の姿がかなり色濃く投影されていると思って間違いないでしょう。
実体験に基づいているだけあって、この作品はリアリティに溢れています。可能な限り1945年夏当時の霧島地方そのままの姿を再現するよう、かなり細かいところまでこだわって演出しているらしいです。
言葉や服装や建物、その他諸々のモノが徹底的に忠実に再現されたおかげで、私のような戦争を知らない世代にも、当時の生活の様子がリアルに感じられるのだと思います。
この作品にはメッセージ性はまったくない。だからこそ私は新鮮味を感じました。
少年・康夫を演じている柄本拓という少年は、俳優・柄本明の息子。父親譲りのボヤッとした存在感が、この作品の味かもしれませんね。原田芳雄や石田えり、香川照之といったアクの強い役者たちに囲まれたボヤッとした少年がリアリティを生み出しているのだ、と言ったら言い過ぎかな。