1.《ネタバレ》 冒頭から既にホウ・シャオシェン色が全開。
ホウ監督にしか出せない自然な雰囲気、そして台湾の暑苦しさがリアルに伝わってくる。
風景をただ撮っただけと思わせながらも、実はホウ監督にしか映し出すことのできない不思議な暖かみを映像から感じる。
つくづくホウ監督は天才なんだなぁと感じる。
さて、本作ははっきり言って怖いくらいに情け容赦なく暗い内容である。
まず主人公の父親が肺病で血を吐いて死に、次に母親が舌癌で死ぬ。
そして挙句の果てには、おばあさんが畳の上で1ヶ月間放置され老衰死する始末。
しかし、全編を通して心和む素敵な音楽が流れている。
そのせいか、そこで起きている人が死ぬという悲劇を「ごくごく自然なもの」として受け入れることができた。
ホウ監督の音楽センスは理屈抜きに好きだ。
特に本作の音楽は素晴らしい。
日常に横たわる“死”という恐怖や別離というものを、特別に悲劇として誇張することなく、自然の摂理として表現してみせた本作。
暖かい映像美と相まって、暗い内容とは裏腹に「爽やかさ」さえ残した。
その絶妙なさじ加減。
やはりホウ監督を天才監督と認めざるを得ない。
ホウ監督の作品は沢山見てきた。
そしてようやく、この監督の凄さと良さを感じることが出来た始めたように思う。
この監督は一筋縄では到底いかない。
それだけに、その凄さを一度でも感じてしまうと、また別の作品を見たくなってしまう。
そんな魅力が、この監督には確かにある。