9.《ネタバレ》 自分がいなくなることや行ったことのない帰れない世界は怖いものです。
だから輪廻や天国を人間は夢みるのであって、
ほとんどの宗教はなんのリアリズムもない夢の世界を説いています。
この映画はリアリズムが理解できないとただ主人公がかわいそうとか、
周りの残される人に感情移入し泣かされてしまうかもしれません。
実際私もグッときたのですがその感動よりも描きたいことに興味を持ち、
しばらくしてまたこの作品を色々な角度から観てみようかと・・
たぶん次に観るときはまた評価が上がっているかもしれません。
今回は私は客観的に観て感心し感動しただけにとどまっています。
尊厳死を選んだ主人公に対し最後まで第三者の目でしか見られなかった、
考えられなかったその他の人々の気持ちは大変よくわかります。
これだけそれぞれの人々の気持ちをきちんと描写されている映画は珍しい。
共感できたふたりの女性のうち本当に添いたかった女性は、
われに返るあの演出はうまいとしか言いようがない。
そして神父の無責任な言葉は的をついており、
私は報道の自由が恐ろしくなりました。
同じ体の不自由な立場の神父がテレビ画面からメッセージを送る。
それは宗教を神を恐れさせるためではないにしろ、
結果的には本人や家族には偽善にしか映らなかった。
誰の立場もわかりすぎる説得力のある映画なのに、
主人公の立場には立てない自分はあくまでもその他の人と同じ。
ただ意義のある作品です。
いつかは誰もが考えなければいけないことを、
美化したり泣かせようとする作品ではありません。
映画の手助けという点では、
かなりうまいこと映画化されてるなぁと感心しました。
音楽がいいし映像も見やすく演出は「バーディ」を彷彿とした、
上空から飛ぶ鳥のカメラのソレです。
生きてる意味って何?
と問う作品が多い中で死ぬ意味って何?と問う映画は珍しい。
戦争や仕方のない理不尽な題材でこのテーマはあるけれども、
実話でもある(近年にニュースでありました)この作品は、
死への賛美や逃避でもないきわめて現実的な内容であります。
現実的であるがゆえに私は理解し興味を持ったのかもしれません。