1.《ネタバレ》 のっけからネタバレで申し訳ない(ずっとずっとずーっと誰かが1番レビューしてくれるのを待ってたんだけどさー)。こないだ『イントレランス』で初めてグリフィス作品に触れたんですが、彼の語り口はどうしても鼻につく部分があって、のめり込めない事がわかりました。原因はおそらく、この映画をずっと先に、リアルタイムで見ていたから(っても日本公開は80年代に入ってからですが)。劇場に2回足を運んで、4回観ました。そこかしこで遊びまくりの画面が楽しい逸品。俳優的には、バート・レイノルズとライアン・オニールという当時のハリウッド2大プレイボーイにドタバタやらせたり、『ペーパームーン』で人気爆発直後のテイタム・オニールに魅力を殺した演技させてる(同じスタッフだから、これは確信犯)のも見どころか。
…さて、サイレントが復権するのは90年代。タランティーノやカウリスマキやベント・ハーメルなんかの異色監督が、この時代の技法を多用して再度市民権を得ます。でもそれまでは、古きよきニッケルオデオン時代の字幕やオーバーアクトや無茶なカット繋ぎは(仏ヌーベルバーグ時代を除いて)ファッション的に、スパイスとして使われただけ。サイレントはなぜそこまで冷遇されたのか…? オイラは映像作家グリフィスが音を欲し、サイレントスタイルを叩き潰したようにしか見えないんです。本作の最後で、『國民の創生』のプレミア上映の帰り道、「俺たちの時代は終わったんだ…」とシンミリ去っていく主人公たち。ボグダノヴィッチ流のペーソスの中に混じって、天才グリフィスへの「シラケ感」が漂って、観客までが映画の新しい時代の到来を全く喜べない心境になります。初期の映画の手作り感覚や一発屋的ショーマン感覚に満ち溢れた怪しげな香具師たちのドタバタは、字幕が復権した今の時代に見返すと、また一層味わいが増しますよ。70年代作品でありながら、極めて今風なテクニックを駆使した本作。内容的には70年代らしくヌルくてキレは悪いけど、今の時代に振り返れば、予見的で、示唆的で、刺激的です。サイレント万歳。