1.《ネタバレ》 かつてはニューヨークを舞台とした映画を得意としていたウディ・アレン監督だが、ヨーロッパとの出会いを果たし、今回はスペインとの出会いにより、監督の新たな一面が引き出されている。
ニューヨーク時代のシャープで冷淡な雰囲気とはまるで異なり、スペインの陽気な雰囲気がそうさせているのだろうか、全体的に丸みが感じられる。
また、ストーリーがどんどんと予期しない方向に進みながらも、完全な調和が保たれている点が素晴らしい。
本作を見るまでは、アレン監督の衰えを感じていたが、ベテランの円熟した手腕を発揮したばかりか、新たな境地を模索している点は驚かされる。
まだまだ彼は終わっていないようだ。
アントニ・ガウディの作品、スペインのギター、写真などを利用することにより、芸術的な雰囲気に溢れている点も見逃せない。
さらに、ウディ・アレンらしさは失われてはいなかった点も評価したいところ。
各キャラクターは結局、同じところをぐるぐると回っているだけだろうか。
レベッカ・ホールは婚約者を愛しておきながら、人生の不満を抑えられずにいるものの、スペインで世話になった奥さんと同様に現状を維持しようとする。
スカーレット・ヨハンソンは何かを得たとしても、現状に納得できずに自分探しを延々と続けている。
ハベエル・バルデムとペネロペ・クロスはお互いを傷つけながら、別れたり、戻ったりを繰り返している。
人間というものは、悩んだり、苦しんだりしながら、結局スタート地点から進められずにいるものなのかもしれないというようなことを、本作を見て感じた。
人間というものは変われるようで変われないのだろうか。
エンディングについては、特にオチもなく、投げっぱなしにしたことは、本作のテーマや趣旨を考えれば、ベターな選択だろう。
確かに、何らかの結論を付ける類の作品ではない。
ただ、シニカル的な味付けをもうちょっと工夫すると、一般の観客には分かりやすい作品になったかもしれない。
アカデミー賞を受賞したペネロペは、(役柄の違いがあるにせよ)スカーレット・ヨハンソンを圧倒する存在感をみせている。
彼女の登場により、空気感が明らかに変わるという面白い効果が出ている。
それまでもカオスな状態だったのに、さらに異次元のカオスに突入しているが、ウディ・アレン監督がそれを上手くまとめ上げている。