15.《ネタバレ》 “King Kong”『コングの王』…としときましょうか。なんかコングって、ゴリラとか猿とかの意味かと思ったら、クーパー監督の創った新しい言葉のようです。もっとも91年も前に創られた言葉なので、キングコング=巨大な類人猿として、世界中で認知されていると思います。
オープニングのキャストクレジットのあとに“AND KING KONG (THE EIGHTH WONDER OF THE WORLD)”『世界八番目の不思議』とあります。髑髏島にはキングコング以外にも恐竜や巨大なヘビが出てきて、これらも充分にワンダーな存在です。世界がまだまだ謎に包まれている感が感じられて、なんだかワクワクしますね。
島に向かう船上で、デナムが美女と野獣のドレスを纏ったアンを撮影。何かを見上げ、驚き、恐怖して、目をそらし、叫ぶ。それを見学していたジャックが真顔で「何を見せるつもりだ?」アンもジャックたち船員も、この先に待ち受ける恐怖を知りません。もうこのシーンで、デナムが撮ろうとしているモノの巨大さと恐ろしさが伝わります。そして実際のキングコングと遭遇した時のアン。両腕を縛られ、大声で叫び、身をよじって逃げようとするアン。船上の演技の恐怖と、本当の恐怖の対比が巧く出てました。
恐竜とかの出ない'76年版は、小さい頃からテレビで流れていて観ていますが、オリジナルは今回が初めて。“コングの造形や特撮技術の素晴らしさ”については、皆さんのレビューをご参照頂くとして、“アンとコングの関係”について書いてみます。
意外だったのは、コングが命がけで執拗に追いかけた美女・アンにとって、コングは最後まで恐怖の対象だったことです。
アンを恐竜から守ったり、デリケートに(言い換えればエロく)衣装を脱がしたりと、私のイメージ通りの心優しいコングなんですが、アンは終始、コングを恐れていましたね。恐竜から守られたときも、ニューヨークで見世物として縛られたコングを見たときも、アンはコングに愛情に類する感情を見せません。飛行機に撃たれ、経験したことのない痛みに死を覚悟したコングが、一度アンを抱き上げ、すぐに優しく降ろし、お別れの意味だろうか軽く撫でる。ここでさえ、コングの最後の時でさえ、アンはコングを見ていません(そう観える)。この時代に制作陣は、これだけ表情豊かなモンスターを産み出したのに、対する美女アンには、意図的にコングに心を開かない演出を選んだことが、ショックでした。
でもだからこそ、最後の「美貌が野獣を仕留めたんだ」が活きてきますね。キングコングってモンスターは、男の性欲の象徴だったんじゃないでしょうか?だから変な話、コングが数あるビルの中から一番高いエンパイヤステートビルを選んだのは、恐らくアレですよ、あのビルが、一番雄々しくいきり立ってるからですよ、きっと。すみません。
アレだけ愛しても、守っても、追いかけても、決して振り向いてくれない美女アン。女の美しさの虜になったら、キングコングでさえ命を落とす。そんな、美女を見れば一目惚れしてしまう、世の全ての男への、教訓なんじゃないでしょうか?