2.《ネタバレ》 ジャック・タチ監督のことも、シルヴァン・ショメ監督のことも全く知らない。
知っていることは、アカデミー賞長編アニメでノミネートされたことだけだ。
何も知らずに鑑賞してみたが、ドハマりするようなテイストではないものの、昔ながらの素朴なテイストに癒された。
また、時代に取り残されているにも関わらず、愚直なほどの真っ直ぐな生き方は、観た者それぞれが自分自身の姿と重ねあわせることができるだろう。
商品宣伝と魔術を組み合わせた新しい時代へと移行することもできただろうが、彼はそれを放棄している。
一方で、ど田舎から付いてきた娘が都会風のレディーへと成長していく、時代に応じた生き方も描かれており、二人が面白い対比となっている。
時代に抗いながら生きる愚直さも、時代に応じて生きる成長力も、どちらも否定されていないような気がする。
これらが“人生”ということだろう。
どちらの道にも答えのない人生というものが投影されている。
苦労して着飾らせた挙句に若い男に走る姿に違和感を覚えるかもしれないが、二人は恋人というわけではないのだから、裏切られた感覚はないだろう。
むしろ娘のような存在として見守っており、狭い世界に閉じ込めるよりも、広い世界へと進んで欲しいと成長を促すような感覚があったような気がする。
野に放ったウサギについても同様の感覚があったのかもしれない。
「魔法使いは存在しない」というメモも印象的だ。
我々は魔法使いではないのだから、成功できなくてもいいのかもしれない、
我々は魔法使いではないのだから、何もできなくてもいいのかもしれない、
地べたを這いつくばって生きていてもいいのかもしれない。
我々は魔法使いではないのだから。